8月11日オンラインよりみち読書会の開催レポート

8月11日(火)に「ちょっと変わった本について話す会」をテーマにオンライン読書会を開催しました。主催を含めて、6名での会となりました。

日常生活と本の世界での「変わっている」は基準がちがいます。「変わっていること」を考えることで自分の価値観が表れるのでは?という狙いで開催したものです。普段の読書会なら紹介しにくい本も紹介しやすいかもと考えていましたが、想像していた以上に色々な本が集まりました。

①『放浪の天才数学者エルデシュ』ポール・ホフマン

83歳で亡くなるまで、1500もの論文を発表した数学者エルデシュ。鞄一つで世界中を放浪して、いきなり「君の頭は営業中かい?」と家を訪ねて数学の話をする。生活のことは何もできないけれど、数学を何よりも愛した一人の数学者エルデシュの生涯を描いた作品。

こちらは実在の「変わっている人」の伝記。「誰かしらは変人に関する本を持ってくるのでは?」と予想していましたが、数学に突出しているあまり他のことは抜け落ちているエルデシュ。何か一つあれば、変人エピソードも「天才の証」のように聞こえるので不思議です。

②『独裁者のデザイン』松田行正

ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東…。世界中の独裁者がどうやって民衆に気づかれずにプロパガンダを浸透させていったのか。ポスター写真の「視線」などのデザイン面から、明らかにしていく一冊。紙の本を手にとると、スターリンと毛沢東が覗いているように見える本のデザインも。

こちらは装丁というか、本のデザインが変わっています。本を閉じて、横から見ると顔が印刷されているように見えます。紙の本ならではの工夫で「こんなこともできるのか…」と感動してしまいました。視線やポスターなどの視覚的メッセージを明らかにする内容も興味深いです。

③『ゆきゆきて「神軍」の思想』奥崎謙三

『ヤマザキ、天皇を撃て!』の著者を主人公にしたドキュメンタリー映画「ゆきゆきて神軍」が絶賛されたが、著者はこの映画を撮り終った時点で起こした殺人未遂事件で12年の刑を受けた。本書は、判決の出た日の翌日から独房で書いた控訴趣意書の添付書類により構成する。(新泉社 紹介ページより抜粋

「狂気と知性、どちらも持った人の行動原理が書いてある。戦争の被害者でもあり、それが変わった形で出ている人」と紹介してくれました。いや~、濃い…!「変わった本」をテーマにしていると言っても、政治運動、戦争、精神疾患、逮捕…「これでもか!」というくらい、盛り込んだ本が登場するとは想像していませんでした。笑

④『倫理の死角-なぜ人と企業は判断を誤るのか』マックス・H・ベイザーマン

企業不祥事はなぜ繰り返されるのか? ハーバード・ビジネススクールの名物教授が人間の意思決定プロセスを実証的に分析し、「行動倫理学」という新たな視点で人や組織の行動メカニズムを読み解きながら、健全な企業組織を構築する方法を提示する。(amazon 紹介ページより引用

多くの人や企業は「倫理的な行動をとっているつもり」なのに、なぜか不祥事は無くならない。それには、死角があるから…という内容。感想共有の中で「自分のミスは環境のせい、他人のミスは人のせいだと思う傾向があるらしい」という発言があり、ちょっと背筋が寒くなりました。ここで「へー(私はちがうけど)」と思ったらまさに…なんでしょうね。「不用意な発言できないわ…」と、なりました。

⑤『自分の小さな「箱」から脱出する方法』アービンジャー・インスティチュート

人間関係の中で陥りがちな思考の罠、問題を相手のせいにして自分を守ることを「箱」として、どうしたらそこから脱出できるのかを書いたビジネス本。

「読んでいて、身に覚えがあった」と、紹介してくれました。居心地が悪くなるくらい、真摯に受け止めたのだなぁと感じました。4冊目の倫理の死角とも相通じるところのある本です。

⑥『聖なるズー』濱野ちひろ

【2019年第17回開高健ノンフィクション賞受賞作】犬や馬をパートナーとする動物性愛者「ズー」。性暴力に苦しんだ経験を持つ著者は、彼らと寝食をともにしながら、人間にとって愛とは何か、暴力とは何か、考察を重ねる。そして、戸惑いつつ、希望のかけらを見出していく──。amazon 紹介ページより引用

ガラッと変わって性愛の話。「読む前はちょっと気持ち悪いかも、無理かもしれないと思っていたけれど、読み終わったらガラリと見方が変わった。拒絶してしまうのは簡単だけれど、それでいいんでしょうか?」と紹介してくれたのが印象的でした。相手と同意を取れればいいのか、そんなに言葉を重視していいのか、など性に限らず愛について考えさせられる本だそうです。意見が割れそうなので、いろいろな人の感想を聞いてみるとおもしろそう。

⑦『スーパーナチュラル・ウォー ー 第一次世界大戦と驚異のオカルト・魔術・民間信仰』オーウェン・デイヴィス

第一次世界大戦中のヨーロッパでは数々の迷信や呪術、占い、予言、まじない、都市伝説などの化学で説明できないものが流行した。オカルトと呼ばれるものと戦争の関係性について書かれた戦争民俗学、戦争社会史の一冊。

「こんな学問、あったんだ?」というのが最初の驚きでした。初めて知りました。実際に流行した人形などの写真を見ると少し怖い…。ただ、「不安なときは何かにすがりたくなるだろうなぁ…」と思います。大量の死を説明できる理論なんてない、となりの人が死んだ理由も、自分が生きていける保障もない…そんな状況だと、何かが欲しくなるかもしれません。

⑧『となりの脅迫者』スーザン・フォワード

「毒親」の本で有名になった著者が「毒になるのは、親だけではない」と書いた本。恋人、上司、友人…いろいろな人が、悪意があるように見えない形で少しずつ他人を操作している。そのやり方と、その関係性から抜け出すための方法を明らかにした一冊。

わたしの紹介した本ですが、他の方が紹介してくれた本と共通点があります。「知らないうちに、他人から操られている」とか「自分がいつの間にか、他人を踏みにじってるかもしれない」といったメッセージの本が何冊かありました。これは、まさにそういう本です。めちゃくちゃ痛いところ突かれて、ゾッとするし、落ち込みます。

以上、8冊の本を紹介していただきました。

最後に「今日出た変わった本は、全部、現実の本ですね。」とどなたかがおっしゃったのがヒヤッとしました。言われてみれば、ノンフィクションばかり。おおお…、恐ろしい気づき。

普段は蓋をして見ないようにしている部分の本が集まったなぁ…という印象です。残った懇親会でも、安楽死について意見交換したり、普段ではなかなか話せないことについて話せました。うちは、やっぱりこういう話のできる場所にしていきたいなぁと思いました。再現するの、難しいんですが。

ご参加、ありがとうございました!

次回は、9月8日(火)から「自由って何?と考える会」をテーマにオンライン読書会を開催します。

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